たまに思い出す一節がある。何の本だったか忘れたが、『誰もが生きている今この瞬間は、時間という縦軸と、空間と言う横軸の交点にある』というもの。
私の生活している地域は、約100年ほど前から今でも海浜別荘地としての性格を持っている。家の近くはその中でも別荘の多かった場所。半径2百メートルのところに今もまだ、教育者や、実業家らが建てた古い風情ある別荘建築がいくつか残っている。
幼いころから、その建物たちの佇まいは魅力的にみえていた。大人になって少しは知識欲もついたせいか、自分なりにそれらを深く解釈したい衝動に駆られ、建てた人物や、理由、エピソード、建物の意匠の特徴などを調べ始めた。所有者や近隣の長老らに話を聞くことから始め、古い写真などを集めてきた。
日常、自転車で走っていて、老人から聞いた場所に差し掛かったり、路傍に建物や古い壁などを見ると、当時の名残を感じ取ることがある。この瞬間に、冒頭の言葉を思い出すのだ。
それと同時に、自転車のタイヤは「生活道路」の路面から離れ、縦軸と横軸を軽やかに動き回るタイムマシーンと化す。時空を行き来する心地でペダルをこぐのが心地よい。
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