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おじさんの波乗り


家で過ごしていると、一日に数度、外からキ―キーと大きな自転車のブレーキ音が聞こえる。坂を登った所に住んでいる親戚のおじさんだ。ゆっくりと坂をくだるのでその音は長い。もう70過ぎになったが、元気。明るい人でよく豪快に笑っている、酔っぱらうと冗談ばかり言っている。畑をやっているせいか、少し土がかすれた紺の作業着で、暖かい日には踵とつま先の部分がグレーになっている靴下に、鼻緒が渋い緑色の草履をはいている。ただの普段の服装だが、くたびれた自転車とマッチして意外に雰囲気がある。

 夏になると私は祖父と家の下の浜に海水浴に行くのが日課だった。泳ぎにいくとおじさんも孫を連れていつもいた。海の中でおじさんが教えてくれた波乗りの事をよく覚えている。

 「昔はよぉ、洗濯板を家から持ってきて波にのっかんだよ。白い泡が出来っところから乗るだよ。でけえ波がくんぞ、ほれやってみろ。」

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