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歩く 食べる 楽しむ 考える



友人のK君夫婦が遊びに来た。学生の頃から10年来仲良くしている二人。うちの子どもたちをかわいがってくれていて、年に1.2回はこちらに遊びに来てくれる。

K君は学生の頃からひとり旅をするのが好きな質で、シベリア鉄道にのってヨーロッパに行ったり、キューバにいったりしていた。行く先々での思いがけない展開や人との会話を好む、スペイン料理の料理人でもある。つい先日、二人はフランスからスペインまでのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩いてきて、日本に戻ってきたところだった。今回はその土産話といっしょに、料理を作って食べようという一日だった。



カトリックの宗教儀礼として巡礼に出る人はもちろんのこと、ここ10年では特にツーリズムとして世界各地から巡礼に来る人がかなりの数増えているという。K君が初めて巡礼に行ったのは11年前。今回は3回目だった。キリスト教信者でないK君が巡礼に出ようと思ったのは、長期にわたってその土地を味わうことができて、いろいろな人とのふれ合いがあるからということのようだった。1か月半ほど歩き続けながら、アルベルゲという巡礼者たち向けの宿に泊まって自炊をするのが巡礼での生活。3度目の今回、料理人としての経験を経たうえで巡礼にでたK君は、料理や食のもつ力を感じたという。


同じ道程を歩く巡礼者たちは、追いついたり追いつかれたり、泊まった宿で顔を合わせたりして親しくなっていく。日が沈むと巡礼者は夕食と会話の時間を楽しむ。どうやら料理のうまい日本人がいると噂になったらしくて、宿にいると知らない人から「君の話を聞いているよ、ぜひこのワインと交換に料理を作ってくれない?」なんて声をかけられることが多かったという。そうやって交換したものや、よりおいしいものを作るために調達した調味料がバックパックの中に増えていく。次の町の宿で知らない人たちとテーブルを囲んで、乾杯して語ったりカードゲームをしたりする。ひとつひとつの会話の断片から、自分なりに世界を感じ取って捉えていく。そんな毎日なんだろう。旅と食、なんとエキサイティング!私も巡礼に出てみたくなった。

夜は、わが母校、保田小学校を改修した道の駅に泊まって、ワインとひまわりの種をつまみにして3人で語らった。高校の地理の先生の資格を持つK君は黒板を使っての説明がしっくり来ちゃっていた。酔っ払いたちの保田の夜にサル―。ムーチョスグラシアス、マタノモウネ!

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