古い観音堂に向かう道。急坂を上ると、尾根沿いに桜並木の道がある。
私がここを訪れたのは今から2年前、保田の地域調査でのことだった。生物学者・小泉丹は、昭和9年にこの場所から保田の景色を眺めていたことを日記に書いている。それがいったいどんな場所なのか実際に見てみようと思ってのことだった。私がここに来たのは初秋だった。思いがけず出会った桜並木に驚き、満開の桜並木を想像して、「こんな場所があったのか」と驚いた。近年植樹された桜の並木道は近隣にいくつもあるのだが、どうもしっかりと整備され過ぎていて面白みがない。ここは道幅の狭さが特有で、歴史感と郷愁を誘う。
ここを見つけて以来、桜が満開になったら子どもたちに見せてやろうと思っていたのだった。
5日前、保育園と幼稚園を卒園したふたりの我が子を連れてこの場所を訪れた。ぐんぐん上る坂道にふたりは興奮して、カーブを曲がった先に現れた桜並木にとてもはしゃいでいた。子どもたちも気に入ってくれたようで、なんだかうれしい気分だった。
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