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水仙をとりに

水仙が咲いたら、一輪挿しでもしてみようと思ったのは、春の事だった。その後、初夏から、旅館の中居として仕事をする事になった。旅館ではお客さんが来る前に生花を活けて、部屋のしつらえの最後とする。いろいろ旅行慣れしている御客のなかには、最近は造花をやってるところも増えてきたけれど、ここはいつも生花だから気に入っているという人もいる。この仕事をするようになって、日常で花を活けることが増えた。まるっきりはじめてのことだったが、結構好きな業務だ。

日中、少し遠くにある図書館に行くついでに立ち寄った中古屋で、手頃な花器を見つけた。高値の花器が並ぶ棚の再下段に、ファンシーな照明と雑多に置かれていた。娘の帰りを待って水仙を家の近くの谷津に採りに行った。

日が傾き風が強くなり始めたころに出かけた。畦道を歩きながら娘に「水仙て知ってる?」と聞くとぴょんぴょんと跳ねながら「知ってるよ、お花が白いやつでしょ」と返してきた。ぴょんぴょん跳ねるのは、こいつの嬉しい時の癖。娘が幼稚園から帰宅してすぐ、風も強かったのに連れ出してきたので、ひょっとして嫌だったかなと思っていたが、ひとまず安心した。

少し歩くと、ほそく別れた道の先、土手沿いに水仙が群落を作っていた。2人ですこし小走りで向って、花と葉を2本採ってきて、玄関に飾った。


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