栃木県の那須が好きだ。その理由の一番は、SHOZOに行くこと。次にリゾートの二期倶楽部の存在があることだったのだが、残念なことに今年の夏、二期倶楽部は30年にわたっての営業を終了したのだった。
二期倶楽部は那須山の麓の広大な森がその敷地になっていて、その中に美しい佇まいの建築が点在している。大谷石がふんだんに使われた本館や、モダンなレストラン棟、木立の中に建つ平屋のコテージ群。海辺で生活している私にとっては高原に身を置くだけでも新鮮な気持ちになる。二期倶楽部は日本を代表するハイクラスのリゾートでありながら文化的な取り組みや発信があった稀有な存在だったと思う。その取り組みも含めて二期倶楽部には理想的な世界があった。
例えば「山のシューレ」というイベント。人と人との交流を通して、気づき、学び、の場を創造しようというものだった。各界の学者とかアーティストとか、クリエイターが集まってワークショップや表現をする催しで、二期倶楽部はその会場となっていた。以前泊まった時に山のシューレの冊子をコテージのテラスで読んだ。美しい自然環境のなかで何かを学んだり考えたりする楽しさは、人間にとってすごく健康的なものなんじゃないかなと感じた。 創業者の北山ひとみ氏は、「学びと文化を通じて、あらゆる垣根を越えて世界中の人々が集い、再び旅立っていく場所となることを願って、創業30年にわたって運営してきた」という。
一般にリゾートという言葉には二つの意味があると思う。一つはサービスに見合ったお金を出して、食や屋内外の環境を堪能して帰るというエンターテイメント産業的な意味。これだけでも十分に楽しい時間が用意されていているのだが、個人的には、もう一つの、知的好奇心を駆り立てるような、行くことに何か成長できるようなものが欲しい。
二期倶楽部のバーラウンジには大きい本棚があった。文芸書や美術書などがさらっと置いてあった。その空間が二期倶楽部の存在を象徴しているようだった。
旧二期倶楽部の隣地には、二期倶楽部を運営していた二木リゾートが新たに作ったアートビオトープという宿ができた。いずれは行ってみようと思っている。
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