隣の海岸に古い建物があって、知人がかれこれ2年くらい改装している。飲食店にするのだそうだ。
その建物は、少なくとも私が幼いころからはずっと空き家だった。一時カヤック体験の倉庫になったりしていたのを覚えているが、基本的に人の出入を見かけたことはなかった。永年目と鼻の先の海の砂と強風にさらされていた印象だ。
この建物の母屋は大きな三角屋根にコロニアルが張られてちょっと変わった佇まいをしている。この辺りの海水浴場が芋を洗うように賑わった昭和40年代に、宿泊兼海の家のために誰かがどこかから移築してきた茅葺の建物だという。母屋の周りには広いガレージのような空間や海と平行に廊下が続いていたりしてちょと不思議な印象。増築や修繕を繰り返したツギハギな感じが個性的な廃屋だった。
近所なので時折顔を出すのだが、この前行ったときには、海側にカウンターができていたり、床は新たに張なおされ、ワックスが塗られてきれいになっていた。廃墟同然だった空間が少しずつ変わっていって、今や心地よいラウンジに変貌しつつあった。ほぼ一人でやっているのには毎度驚かされる。
この建物までは小さな岬をぐるっと回って、子どもと散歩に行くのにはちょうどいい距離。いずれお店が出来上がったら、子どもたちと散歩しながら行こうと話しているところ。
‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐まったくの余談だが、地域の歴史調査の中で未解決のものがある。それは、著名な茶道研究者が戦前に保田に建てた茅葺の古屋の存在についてだ。戦中に町内の別のところに移築されたのだが、それ以降の所在が不明だ。ひょっとしたら知人のお店の建物だったりなんかしたら面白いななんて思っている。
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