先月、フリーペーパー0470-の企画として稲毛海岸での SHI TSU RAI で行われた「じんの展」。会場の隅に沖箱を展示してみた。かつての生活ではありふれていた自家製の手織布を、時を越えてその美しさや背景を感じ取ってもらおうという巡回展だった。私の中ではじんのと沖箱は、共通した魅力を感じる。
明治時代から昭和初期にかけて南房総の南部の漁村で織られた古布が並んだ。土着的な生活のなかで作られた布は地布(じぬの)と呼ばれたそうだが、「じんの」とはその訛りの発音だ。といってもそういう生活は私たちの祖父世代の幼少期の記憶にもあるくらいだ。当時の漁村には、綿花畑や藍畑があり、 干鰯 は肥料となった。町には紺屋もあり、手作りの布は半纏や布団として家で使われたのだった。
これらの布と一緒に、沖箱も各家庭で使われていた事だろう。
箱の中の上段は童謡浜千鳥の歌詞をイメージして。下段は展示の趣旨に関連付けた本をセレクトした。会場で沖箱を目にした中年の女性が「まるで老人と海のような感じですね」というので、中からその文庫本を取り出して見せた。
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