息子をつれて山に散歩に行った。急な坂道を登って、まだ咲いていない桜の並木のトンネルをくぐって、海が見えるところに出た。大きくても地面から2メーター以内の高さで世界を捉えている人間にとって、高いところに登って身を置くという行為は意義あることだと思う。
数年前、隣町にある、幼児教育の世界では独自の取り組みが注目されている保育園に伺ったことがあった。とあるメディアの取材のためだった。そこの園長さんが話してくれたことが今でも頭に残っている。その保育園では、園庭の隅に階段で登れるウッドデッキの見晴らし台が園庭の内側や園舎の方を向いて建てられている。このデッキは、子どもたち自身が、自分たちの生活する空間を俯瞰できるようにと作られたものだという。喧嘩したり、楽しんだり、困ったりと、いろんなことが子どもたちの毎日に起こるのだが、それらの出来事は「自分」が保育園の毎日に参加して作っているものなんだと感じてほしい。園全体を一つの自分自身が身を置いている「宇宙」として感じ取ってもらえるようにとの計らいだという。
眼下の景色のなかに、一緒に石を積んで遊ぶ砂浜とか、いつも車でとまる信号とかみつけて、その場所を教えたら、息子はうれしそうにしていた。街並みを眺める息子の背中を見ながら、人は俯瞰をすることで自分の空間的、精神的な居場所を知ることができるんじゃないかと思った。
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